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歴史随筆(23)      打田 昇三  (2010.10.1)

  

 極北からの便

         打田 昇三

 

 探究心旺盛で古代史研究図書を出されたり世界の秘境を訪れたり、多忙なN先生からは必ず旅先投簡のお便りを頂くのだが、

これが何処からだか直ぐには分からず、私は世界地図やら百科事典などでようやく探している。

 今回の絵葉書も雪と氷の写真で、切手はノルウェーらしいが本土からは千キロも離れた島、文面には「人間が住む最北端の地・

北緯78度13分・スピッツベルゲン島のロングイヤービーンに居る」と書かれていた。

85%が氷河の諸島で、何百年か前に探検隊が発見してから、捕鯨やトド猟の基地になり炭鉱もあるので住人が増えたという。

 流れ込む暖流の影響なのか北極圏でも「冬は北陸の雪国より一枚重ね着する程度…」の寒さで氷点下15度、夏は5度、樹木も

育つが数センチの柳…と聞いて、石岡に住んだことを幸せに思った。

 郵便は首都オセロ経由らしく「AIR MAIL・FORJAPAN」注記で後は郵便番号以下、石岡市…の宛名で六日目に着いた。

文明が地球全体に行き渡っていることを実感するが、日常の細かいことに国境が無いのに人間に最も大切な問題で国際協調が

進まない現実を思うと、絵葉書の氷まで冷えてきた。